地球侵略計画

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 チッペニ星人達が売る帽子型UFOを被った者たちは誰もが皆、瞬く間に権力の中枢やスターダムへの階段を駆け上がっていく。  サルに毛が生えた程度の知能しか持ち合わせていない人間とその集団である社会をコントロールすることなどチッペニ星人には造作もないことだったからだ。これこそがチッペニ星人達の考える地球侵略の方法だった。  無駄に武力を用いて地球の征服を目論み、たとえチッペニ星人側がそのときは勝利をおさめたとしても、憎しみという感情が何世代にも亘って被征服者の心の内に燻ぶり、後に反乱となって爆発し、支配者側が手痛い報復を受けるというのは多くの歴史が証明している宇宙的事実だ。  もっと穏やかに平和的に地球人を支配する方法はないものかと考えだされたのが、帽子型の小型UFOを使った人間達のマインドコントロールであった。世界中のトップ・リーダー達の頭脳を直接支配できれば、その権力の前にひれ伏す民衆をもまとめて従わせることができるとチッペニ星人達は考えていたのだった。  ある日、その〈帽子店〉に五歳くらいの男の子がやってきた。  少年はその小さな顔には不釣り合いなほど大きな黒縁の眼鏡をかけ、手にはプラスチック製の青いおもちゃの水鉄砲を握っていた。  とりわけ暑い夏の午後だったから、外で水遊びでもしていたのだろう。遊んでいるうちに道に迷って店に入ってきてしまったのかもしれない。無邪気なその表情は帽子を欲しがっている様子にはとても見えなかった。ところがその予想に反して少年は言った。 「ぼうしをちょうだい」  男の子は愛くるしく笑うとチッペニ星人に操られている店主の男に水鉄砲の銃口を向けた。半透明の青い銃身の中で水がぽちゃりと波打った。悪戯好きの少年のようだった。  帽子型UFOの中にいたチッペニ星人は操縦席のボタンを押した。すると人間の目には見えない電磁波が帽子の前方から少年に向けて照射された。これはサーチライトといって、照射した物体の内部を透過して詳細に調べることができた。まだ人間の子供とはいえ、チッペニ星人に比べれば巨人といっても過言ではないほどの体の大きさだ。用心に越したことはない。
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