第一章

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僕達はそれから時々、学校帰りに会うようになった。 と言っても、わざわさ連絡をとって、待ち合わせをしたわけではなく、偶然会った時に、一緒に家に帰ったり、途中の公園のベンチで少し話をしたりする程度であった。 僕と西澤はそんなことを5か月ほど続けていた。僕はその5か月の間に、多分、西澤に淡い恋心を抱いていたんだと思う。 そして、2月14日、僕は西澤からチョコレートをもらった。人生で初めての、女の子からの告白だった。 好きな女の子から告白されて、僕はどうしていいのかわからなかった。 「返事は3月14日にしてほしい」 戸惑う僕に、西澤は言った。 僕と西澤は、初めて、時間と場所を決めて待ち合わせをした。3月14日17時、いつもの公園のベンチで、と。 僕は1か月間、そわそわしながら過ごした。そして、人生で初めてホワイトデーのために、箱に入ってリボンをかけられたキャンディを買い、待ち合わせの場所へ向かった。 でも、待ち合わせの時間に彼女は来なかった。 30分が過ぎても、1時間が過ぎても、彼女は現れなかった。1時間半が過ぎた頃、僕はベンチから立ち上がって、家に帰った。 それでも諦めきれなくて、その日から1週間、毎日、ベンチで彼女を待った。 結局、彼女が現れることはなかった。 僕は、彼女が1か月の間に気が変わったのだろうと思った。僕は告白されて、返事をすることなく振られたのだと。 僕は一週間持ち歩いたキャンディの箱と共に、彼女への想いを駅のごみ箱に捨てた。それは、僕の苦い初恋の想い出だった。 その西澤真帆の死を、全く知らない若い女性に聞かされて、僕は激しく動揺した。 「どうして西澤が、いや、それを何で僕に、というか、君は誰だ」 彼女は言葉がうまく出てこない僕を、少し小馬鹿にしたように蔑んだ目で見ていた。 「ここではなんだから、どこかに座りましょう。そうね、あなたと真帆がよく座っていた公園のベンチに行きましょう」 そう言って、彼女は僕の前を歩き出した。
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