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第五章
大学は冬休みに入り、あっという間に新年を迎え、気がつくと、もう1月3日になっていた。
1月4日の夜の1時。
僕は彼女が残したその言葉の意味がまだわからずにいた。なぜ、深夜に電話をするのか。
そのとき、テレビのニュースが目に入った。
「明日の深夜から朝にかけて、しぶんぎ座流星群が見頃」
これだ、と気がついた。
西澤と公園で話をしていたときに、流星群の話になったことがあった。ちょうどふたご座流星群が終わった後で、テレビでその映像を見たと言っていた。流星群を実際に見たことがあるかと聞かれて、テレビでしか見たことがないと答えた。次に流星群が見られるのはいつかをその場で調べて、1月にしぶんぎ座流星群が見られることがわかった。僕は夜中だから寝てしまいそうだとか寒いだろうなとか、そんな否定的なことを言ってしまった気がする。あの時、一緒に見ようと言えばよかったのだろうか。いや、夜中に一緒に見に行くなんて、高校生の女の子にできるとは思えない。
ああ、だから、電話なのか…。
多分、それぞれの家で空を見上げながら電話をしようということなのだろう。
僕はスマホを準備して、その時を迎えた。彼女からの電話は深夜1時ちょうどに鳴った。
「空、見てる?」
そう言われて、自分の部屋の窓を開けた。
「今、窓を開けたよ。流星群って、これで見えるのかな」
僕は空を眺めたが、普通の星さえあまり良く見えなかった。
「なんか、よく見えないよ」
「家の中だと無理かしら。庭に出てみるわね」
彼女が電話の向こうで動いているのがわかった。
「僕も外に出てみるよ」
僕はダウンコートを羽織って、部屋から出た。家族はもう寝静まっていたので、音を立てないように玄関を出た。
冬の夜はとても寒かったが、耳と頬に当たるスマホが温かかった。
「道に出てみたけど、あまりよく見えないな。空がもっと広く見えるところの方がいいのかな。せっかく出てきたから、公園まで行ってみることにするよ」
僕は空を見上げながら歩いた。
「公園っていつもの公園?」
「うん。あそこは高台だから、ここよりはよく見えると思うから。西山さんは庭で見てるといいよ」
僕は公園に着くと、ベンチに座って空を見上げた。前もってネットで調べた流星の見方を思い出して、できるだけ広くぼんやりと空全体を眺めてみる。
「見える?私、まだ見えない」
彼女の声が耳元で聞こえてくる。目がだんだんと慣れてきて、星がよく見えてきた。
「ねえ、見える?」
彼女からの催促がくる。
そのとき、一瞬、視界の中でなにかが動いた。
「あ、見えたかも」
それが流星だという自信はなかったが、一応言ってみた。
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