第一章

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「そうじゃないかと思ってた。本当の日記とK君との日記を比べると、おかしな部分がいくつもあったから。隠されていた日記は、ところどころが真帆の創作なんだと思う。あなたとここで話をした日の記述は多分本当で、覚えのないデートの部分は空想というか妄想というか願望なんだと思う」 西澤の願望…。僕とデートしたかったという願望ということか。それは僕のことが好きだったということなのか。バレンタインデーの告白は本当で、じゃあ、ホワイトデーに来なかったのは…。 「西澤が亡くなったのっていつ?」 僕は恐る恐る聞いた。 「3年半前の2月15日。朝、学校へ向かう途中、突然倒れて亡くなったの。心臓性突然死って言うらしいわ」 3年半前の2月15日…。西澤が僕にチョコレートをくれたバレンタインデーの翌日。ということは、このベンチで西澤と待ち合わせをしていたあの3月14日には、もう西澤は亡くなっていたということだ。彼女は来なかったんじゃなくて、来られなかったのか…。振られたと思い込んで、西澤を少しだけ恨んだ自分が恥ずかしかった。あのとき、何とかして連絡を取ろうとすればよかったのに。そうすれば、お葬式に行けたし、お墓参りだって…。いや、でも、そんなことに何の意味があるだろう。もう死んでしまったのだから。 僕はとにかく頭が混乱していた。早くこの場を離れたかった。 「知らせてくれてありがとう。それじゃ、僕はこれで」 僕はベンチから立ち上がって歩き出した。
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