第二章

3/6

4人が本棚に入れています
本棚に追加
/27ページ
「お金、もらっちゃったの?」 西山さんが僕の手を覗き込んで言った。 「うん。これでもう一回やる?」 僕が言うと、彼女は少し考えたが、首を横に振った。 「もういいわよ。どうせあなたには獲れないもの」 馬鹿にされたような気がしたが、彼女の言うとおりだと思ったので、何も言い返さなかった。 「ちょっと待ってて」 僕は近くの売店でソフトクリームを2つ買って、1つを彼女に渡した。 「そうね。使い道としてはこっちの方が有益ね」 そう言うと、彼女はソフトクリームをひと口食べて、少し笑った。 あ、笑った。 僕は心の中でつぶやいた。それまではいつも不機嫌そうな顔をしていた彼女が笑ったのを見て、僕は少しほっとした。 「次、行くわよ」 彼女はまた険しい顔に戻って、僕に言った。 向かった先は、怖くて有名なジェットコースターだった。近づいてみると、大きな走行音に混じって乗客の悲鳴が聞こえてきた。 「これに乗るの?」 僕はわかってはいたが、一応聞いてみた。ジェットコースターが苦手なわけではないが、これは相当怖そうだ。 「そうよ。真帆とK君はこれに乗って、悲鳴をあげて、大興奮して、降りた後に怖かったね、でも楽しかったねって笑い合うの」 彼女は行列の最後尾に並んだ。僕もその後ろに続いた。 「西澤がこういうのが好きだなんて知らなかったな」   僕は前を歩く西山さんに話しかけた。 「私もよ。日記を読むまではね」 そう答えた彼女の声は、さっきまでの強気な声とは違って、心なしか震えている気がした。 そりゃ、こんな怖そうなジェットコースターにこれから乗ると思ったら、怯えもするよな…。 僕はそれ以上話しかけるのをやめた。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加