第二章

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列は順調に進んでいった。それに従って、彼女の顔は次第に青ざめていった。 「ねえ、本当は乗りたくないんじゃないの?無理しなくてもいいと思うよ」 もう、乗り場は目の前だった。次には僕達の番が回ってきそうだった。 「そんなことないわよ。こんなの、なんてことないわよ。馬鹿にしないでよ」 彼女は血の気の失せた顔で答えた。 ジェットコースターが戻ってきた。乗っていた人たちが降りていく。 「お待たせいたしました」 乗客は前から順に係員に誘導されていく。 青ざめた彼女の手は小刻みに震えていた。呼吸も荒くなっている。 「さあ、どうぞ」 係員が彼女に言った。 彼女は動けないでいた。 「やっぱり、乗るのやめます」 気がつくと僕は、彼女の腕を掴み、行列に並んで進んできた通路を引き返していた。 ジェットコースターの乗り場から離れたところで、彼女は僕の手を振り払った。 「何よ。勝手なことしないでよ。私は平気なんだから。本当に平気だったんだから」 怒っている彼女の頬はもう青ざめてはいなくて、僕はほっとした。 「僕、苦手なんだ。ああいうの」 僕はそう言って、ジェットコースターに背を向けて歩き出した。 「何よ。根性なしね。ちっとも日記のとおりにできないじゃない。全然、真帆の理想のデートができないじゃない」 彼女の声が後ろから追いかけてきたが、僕は立ち止まらなかった。 「他にはないの?日記に書かれてること」 追いついてきた彼女に聞いた。 「具体的に書いてあるのはこれだけなの。あとは、日が暮れるまで楽しく遊んだって書いてあるだけ」 彼女は少し困ったように言った。 「じゃあ、日が暮れるまで、楽しく遊ぼうよ。あ、僕、あれ好きなんだ」 僕はゴーカートを指差して歩き始めた。 「ゴーカートも怖い?」 僕はからかうように言った。 「馬鹿にしないでよ」 彼女は僕を追い越して、ゴーカート乗り場に向かっていった。 そして、僕達は閉園の時間が近づくまで、楽しんだ。 「最後にあれに乗りたいな」 彼女が指差したのは観覧車だった。 「高いのは怖くないんだ」 「怖いのは高いところじゃなくて落ちるところなのよ」 彼女が言った。 「僕も同じだ」 僕もそう言って、観覧車に向かった。 西澤とのことがあってから、女の子と関わることを避けてきた僕が、こんなふうに女の子と遊園地でデートしてるということが信じられなかったが、とても楽しかった。とげとげしかった彼女も今は楽しそうに笑っているのが、なんだかとてもうれしかった。
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