薄幸女とイケメン占い師

1/8
16人が本棚に入れています
本棚に追加
/73ページ

薄幸女とイケメン占い師

ダサい私と縁切りしたい。 * 「あなた――平並子(たいらなみこ)さんは、ええっとアレだ、有り体に言ってラック値が低いね」 私のフルネームや生年月日等を書いたノートをシャーペンの先でコツコツ叩きながら、若い占い師はひどいことを言った。 「それってつまり……私は運が悪い人間、とおっしゃってます?」 十一月下旬の水曜日、十七時十分。 私は駅前にあるハンバーガーチェーン店の片隅で、元同僚経由で紹介してもらった占い師と、向かいあって座っていた。 彼との間にある小さな白色のテーブルの上には、大学ノートとスリムな筆箱、占いをするのに必要らしい数冊の古い書籍、二人分のMサイズのドリンクが乗っている。 「うん」 シャーペンのノックする部分を顎へ押しあて、スパッと肯定してきた占い師の彼は大学生くらいに見える。 (この人はラック値とやらが高いんだろうな。美形に生まれただけでも、かなり勝ち組だと思うし) 肌トラブル? 何ですかそれ? と、いわんばかりのなめらかで透明感のある白い肌。 明るいアッシュグレーに染めているのに、傷んでいる気配がまったくないツヤツヤの髪。 柳眉の下の目はぱっちり二重で、カラコンじゃなさげな明るい茶色の目を縁取るのは、くるんと上向きにカールした長い睫毛。 鼻筋はすっと通り、精々薬用リップくらいしか塗っていないだろう唇は赤く、ふっくらしている。 難癖をつけるなら、チビではないがあまり高身長でないことくらい。 (でも顔小さくて頭身高いし、脚も長かったしな……) そんな稀に見るイケメンが二十数分前、待ち合わせ場所に現れた時の私の気持ちを考えて欲しい。 私はわりと人見知りするタイプなので、初対面の相手に会うというだけで緊張する。 更に今回会う相手は、『占い師』なんていう胡散臭い職業の人なものだから、いつもの倍くらい緊張していた。 そんな奴の眼前にアイドル系イケメン登場! だなんて、私はすぐに返事ができないくらい、めちゃくちゃびっくりした。
/73ページ

最初のコメントを投稿しよう!