薄幸女とイケメン占い師

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落胆と反感を抱く私を、口を閉ざしたヒトハさんが、色素の薄い目でじっと見てくる。 「な、何か?」 「平さん、俺の知りあいに似てるなって」 「は?」 「スピリチュアルなアドバイス、欲しい?」 突然の脱線と早々の本筋復帰に、何だこの人?! と思いつつも、間髪入れず「欲しいです」と答えた。 「お手軽なのは……そうだなぁ。他人の運を吸わない、運がいい人と仲良くして近くにいると、ラッキーのお裾分けをもらえたりするよ」 「それ、分かる気がします」 「そういう人、身近にいるんだ?」 今私の脳内には、目の前にいる占い師を紹介してくれた、元同僚の顔が思い浮かんでいる。 「いるには、いるかも。でも……」 「仲良くはない?」 「仲良くはあるんですけど……」 私は自分の腕時計へチラリと目をやり、時間を確認する。 「あの、この話は一旦置いておいて、私の仕事について占ってもらってもいいですか?」 「ん?」 「占い料、三十分五千円と聞いています。私今求職中で、無収入なので……」 約二週間前、私は勤めていた会社を退職した。 一応貯金はあるが、多くはない。 一人暮らしのため、アパートの家賃や生活費を考えると無駄遣いはできない。 退職の原因である彼女に知られたなら、「占いなんてまさに無駄遣いだと思うんですけどォ。お金もったいなぁい!」と、声高にここぞとばかりに言うんだろうな、と頭の隅で思う。ムカつく。 「ありゃ、それは厳しいね。じゃぁ初回サービスってことで、今回は一時間五千円にしてあげる」 ヒトハさんはパチンと指を鳴らした後、人差し指で私を指し、ウインクしてきた。 このタイプのイケメンが好きな人なら、ズキューン! とハートを撃ち抜かれる効果音が聞こえたかもしれない。 「予算は一万円とみたから、これなら二時間話せるね! どうして五十パーオフの大サービスするのかって?
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