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「それがさ、見た目、女の子ばりにかわいい男でさぁ」
親友のさっきの言葉を、ヨウヘイは思い返していた。
その親友の家へ遊びに行っていた帰り道、暮れなずむ空を仰ぎながら、ぽつりとこぼす。
「女の子ばりにかわいくても男は男だろ」
親友いわく、危うく恋に落ちかけた、らしい。
ヨウヘイには、全くぴんとこない話だった。女の子でさえ、恋に落とされたことがないのに、男なんて想像がつくはずもなかった。
それ以前に、「オンナノコ」という存在を、「女の子」と意識もしていない。
姉と双子の妹とで板挟みになっている挙げ句、同士である父は、単身赴任で遠くに住んでいる。いわゆる女天下な家庭である。肩身の狭い思いを、なにかと強いられている。
外へ出ても、どの女の子もたくましく、図々しい。本来なら、恋愛対象として見ていてもおかしくないのに、きょうのきょうまで思いつきもしなかった。
とはいえ、部活動を引退して、考えるべきは受験だけだ。ますます、恋に「かまける」ヒマはない。
ヨウヘイは顔を戻した。
幹線道路にかかる横断歩道が見えてきた。歩くスピードを少し上げたところで、住宅の壁の切れ間から、勢いよく人が出てきた。
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