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spike
ヨウヘイは、びっくりしたと同時に、とっさに左へ動いた。足も止まる。
すると、相手もヨウヘイに気づいて、同じほうへ体を持っていった。
丸っこいひたいが、ヨウヘイの肩口をかする。前髪が真ん中で分かれていたから、なおさら、ひたいの丸みが目立った。
まつ毛が長え。
そんなことを思いながらまた右へ行けば、向こうも続く。左へ、もう一度。
お互いに、一呼吸のインターバルを置き、ヨウヘイは今度、向こうから動くのを待った。
ちらりと盗み見た横顔は、ニキビの痕跡が皆無な、きれいな肌をしていた。
すれ違いざま、相手がようやく上を向いた。
顔からの第一印象や、肩幅に伴うスリムな体型で、ヨウヘイは、てっきり女の人だと思っていた。しかし、ヨウヘイが「すみません」と言う間を与えないほど、向こうは、凄まじい眉間のしわを見せつけ、「ガンを飛ばして」いった。まさしく、男のそれだった。
一瞬、キツネに摘まれたような、変な錯角に陥る。
どこかで見た気もする顔でもあった。
首を傾げながらゼブラゾーンの前まで歩いて、ヨウヘイは振り返った。
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