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翌日。
いつも通り出勤すると、遠くの方に見える部署前で誰かが騒いでいた。
あ~。また藤川か。
同じ部署の女子社員の藤川は、どうもオレに対してのアピール具合がすごくて。
元々そういうタイプは、フラフラ遊んでた時代は適当に相手したりあしらったりしてたけど、他に想っている人がいる今は正直そういうことをするのもめんどくさい。
現にこの会社に入ってからは、そういう雰囲気も出してないはずなのに、なぜか女子社員が無駄にアピールしてくる。
そして、そんなアピールをあからさまにしてくるタイプが一番苦手だ。
なんとなく遠くから見てもわかる藤川のいつものパターン。
オレに訪ねて来てる女子社員に常に牙を向くいつものお決まりの流れ。
商品企画1部で唯一の女子社員でチヤホヤされてるのもあって勘違いしてんだろな。
「早瀬さん? ・・・いませんけど。何のご用ですか?」
近くまで行って耳を澄ますと、やっぱりオレの名前が。
朝から何やってんだよ。
「あっ、いらっしゃらないなら大丈夫です」
「どういうご用件ですか? 私が早瀬さんに伝えときます」
案の定予想通りのいつものやり取り。
そう思いながら近づいて行く度、いつもと違う違和感。
最初は藤川の方が気になってそっちだけ見てたから気付かなかったけど。
この後ろ姿とこの話し声・・・。
「いえ。また出直します」
「また?どちら様ですか? 早瀬さんにどういうご用件でしょうか?」
いや、ちょっと待て!
確かに間違えるはずがない。
彼女だ。
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