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第3話
朝食を食べ終わると、三姉妹はそれぞれ食器をかかえてキッチンに入った。当番のキャンディが流し台の前に立つと、自動的に手前の床がせり上がる。
食器を洗いながらキャンディが尋ねる。
「ねえねえ、ご飯食べてるとき、パパ上が言ってた幼稚園の話。あれっていつから?」
「ヨウチエンってなに?」
「シャンプー、パパ上の話聞いてなかったの?」
「聞いてたよ。ワルイ人がはいる場所じゃないの?」
「それは刑務所。幼稚園は子どもが入るの!」
「えッ?わたしたちワルイ子なの?」
「ちがうちがう!良い子が行くの!」
「あ―ッ、よかった!」
キャンディがきれいに洗った食器を、メロディがキュッキュッと器用に布巾で拭きとって、シャンプーが手際よく食器棚に並べていく。
匠とアロンダは食器洗いロボットを使わないで、頭と手の訓練のため子どもたちにも食後の後片付けをやらせている。
「でもみんなに私たちがノヴァだって知られちゃうね」
とキャンディ。
「だから力は使っちゃダメなの」
とメロディ。
「じゃあ、テレポーテーションもリープもダメ?」
とシャンプー。
「うん、ぜんぶダメ!」
「じゃあ、エアバイクも乗馬もダメ?」
「子供はエアバイクを運転しちゃダメなの!それに幼稚園に馬はいないもん」
「じゃあ、ソータイセイリロンは?」
「えっ?シャンプー、相対性理論知ってるの?」
「知ってるよ!ソータイセイリロンでしょ?」
「あんた、自分でなに言ってるか知らないんでしょ?」
「バレたか!」
「バレバレ。ともかく幼稚園で物理学は習わないの」
「えーッ、そうなの?つまんないの。ねえ、ブツリガクってなに?」
「相対性理論ならパパ上に聞いたほうがいいよ、シャンプー。科学者なんだよ~」
「もう聞いたもん。ちゃんと教えてくれたよ。ねえ、目閉じて!見せたげる」
シャンプーがメロディとキャンディの手を握ると三人は目を閉じた。接触型テレバシーを使う。
しばらくして、メロディとキャンディはパッチリ目を開けて顔を見合わせた。
「驚いた!シャンプー、これ全部わかるの?」
「うん、言葉じゃ説明できないけど、記号と数字ならわかる」
「すごーい、あんた、物理学と数学の天才ね!」
「シャンプー、幼稚園より大学院に行く方がいいかも」
「えーッ?わたし、病気じゃないよ!ノヴァは病気しないし」
「ちがうちがう!大学病院じゃなくて大学院!」
「ちがうの?あー、よかった!ねえ、ダイガクインってなに?」
「頭のいい人が行くとこ。シャンプーみたいな」
「でも、わたしみんなと一緒に居たいもん!」
「そうだよね~。それに三歳で大学院行ったら正体バレバレだもん」
「じゃあ、やっぱりヨウチエンにしようっと!」
「幼稚園でお婿さん、見つけなきゃ!」
「三歳じゃ、まだ結婚できないのに?」
「世の中、甘くないよね~」
「ホント、婚活って苦労するわね~」
シャンプーはえ~ッと顔をしかめる。
「メロディ、キツネさん食べちゃうの?」
「シャンプー、なに言ってんの?婚活よ。トンカツと一緒にしない。お婿さん探しのこと!」
「ああ、よかった!だってわたし、ベジタリアンだもん」
メロディとキャンディは異口同音に言った。
「あんたって時どき思いっきしズレるわね~、シャンプー」
というわけで三つ子姉妹はそろって幼稚園に通うことに・・・
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