琥珀色の白銀

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でも、ある時毎朝女の子が神社(おれんち)へ来るようになった。 この町へ引っ越してきた卯本(うもと)咲希(さき)という娘だ。年は17歳。 最近になって引っ越してきた。 学校へ登校する前に、神社までの長い階段を駆け上り、パンパンと手を叩いては「友達みんなと楽しく過ごせますように」とそれだけをお願いして帰って行く。 たまに。袋に入った油揚げを置いて行く日もあった。 人間の姿に変わっていた俺は、長い爪で油揚げの袋を摘み、「狐じゃねっつーの」とポイと放った。 が、ある日、それを見た親父のゲンコツが俺の脳天に落とされた。 「いてぇ!」 俺は煙と共に狼の姿に戻る。 「あの娘の気持ちを大切にせいっ」 「はぁ!?狼を祀った神社って書いてあるじゃねーか!しかも狛犬だって狼だぜ!?あの女が理解してねぇのがわりぃんだよ!」 親父も狼の姿に戻ると、俺の首根っこに咬みついた。 思わず痛みで、「キャイン!」と犬のような声を漏らしてしまう。 「そのような気持ちがお前を真の神に出来ない理由だ!バカ息子め!明日あの娘が来たらキチンと礼を伝えるんだ!分かったな!」 ………ええええ。心底嫌なんですけど…… でも、親父の命令を守らなければ、雷が落ちて来るからするしかない。 ウソじゃない。ホントに雷が落ちるから、それだけは勘弁だ……。
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