琥珀色の白銀

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*** 「真狼くん、今日はお土産、ううん、お供えを持ってきたよ。チキンの黒胡椒焼きと、それから炊き立てのご飯の塩むすびだよ。真狼くんのご家族の分も持ってきたから、是非手を合わせさせてね」 咲希は、その後も毎朝来ていたが、たまにこうして俺たち家族に供え物を持ってきた。 さすがに狼だからって、生肉を持ってくる気にはならないだろうし、俺も頼まない。 そして、社の縁に供え物をおくと、いつもと同じお願い事をする。 俺は供え物が無くても、ただ、ほぼ毎日のように来る咲希を待つようになった。 来ない日は心配する。 次の日に顔を出すとホッと胸を撫で下ろす。 そして、咲希が持ってくる物、近所のじっちゃんや、ばあちゃんが持ってくる物にも感謝できるようになった。 この辺りに住む人たちが、こうして何事もなく過ごし、元気でいて、俺たちにまで気配りしているとは、なんて平和で幸せなんだろうとも思い始めた。 そして、その平和が長く続けば嬉しい。 ただ、いい人ばかりではない。神社で悪いことをする奴もいる。 そんな事をする輩には親父がキチンとバチを与えていた。 しかし、俺ならとっくにキレてるところを、親父はニッコリ笑って数回は我慢する。1回でバチを与える時はよっぽどな時だ。 大体、親父を怒らせた奴は、大きな事故を起こしたり、病気になったりして治らない。 そう言う時に、親父の怖さを実感する。 咲希がここの街に引っ越してきて1年。 俺が体験した事のない、学校の事や、旅行の話を沢山聞いた。 旅行は俺も行くことがあるが、10月に決まって家族で出雲の国と決まっているし、他の所へ行くことはない。 俺も咲希に質問されれば、答えてはならない秘密以外は教えてやった。
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