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1.鏡川(かがみがわ)
「咲夜さん、トレーニングメニューは決まりました?」
七海は早く運動をしたそうに、肩をぐるぐる回しながら歩いてきてそう聞いた。
「メニューはまだ半分ってところね」
咲夜は県警ではマザーコンピュータと呼ばれ、ISDでは勤務計画を始め各個人別のトレーニングメニューを考案したりしている。わずか6名しかいない所属への起用は、贅沢過ぎると言ってもいい。
そこにたまたま通りかかったアリスが、
「七海お姉ちゃん、何してるの?」
珍しそうにそう話しかけた。
アリスがここに来るのは初めてではなかったが、いつもならクロ達のケージの前で座っているか、宿題をしていることが多かった。
今日はももっちが夕方アリスを学校に迎えに行ったあと、少し用があるからとISDにアリスを預けに来ていたのだ。用と言ってもコスプレ衣裳の材料を買いに行くだけなのだが…。
アリスは今日は宿題を終わらせてレイのところに行こうとした時に七海が来たと言うわけだった。
「う~ん、お姉ちゃんねー、何か運動がしたいのよ」
と七海はアリスに答えた後、
「グランド走ってきますね~!」
と言い残して走って行った。
グランドでは、砂の詰まった袋をケージに入れたのを一つずつ両肩に乗せたまま外周を走っている雷がいた。
七海は全く気にせずに、雷の横を、
「お先~」
と言いながらすごいスピードで走り去って行った。スラっとした体形でスポーツ万能にふさわしい筋肉が付いている。県警でも1、2を争う美人だろう。
「ビー!、ビー!、ビー!、ビー!」
七海がグランドを3周したとき、建物2階のグランド側に付いている赤いランプが点滅して、アラートが鳴った!スクランブルだ!
七海たちは先を競って事務室に向かった。
ホットラインからの連絡で、咲夜が受けている。すぐに、
「レイさん、至急です!子どもが鏡川で流されたそうです!」
と言った。
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