7.黒猫に助けられた少女

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7.黒猫に助けられた少女

 昼下がりの授業は、誰もが眠くなるものだ。 アリスもその時睡魔と戦いながら授業を受けていた。手に持っていた鉛筆が、机の下に転がり落ちた…。 (ハッ!ダメダメ、眠っちゃ…)  その時、 「アリス、ミクだけどわかる?大変なの!」 友達の黒猫ミクからだった。頭の中に直接思考が飛び込んできた形だ。 「どうしたの?ミクちゃん、なにかあった?」 と聞くと、 「大変なんだってば!かなでちゃんが、家の入口のとこで倒れてるの!」 「ええ?わかった!先生に言ってなんとかするわ!」  ミクと言う猫はいつも学校に遊びに来る近所の黒猫で、アリスといつも会話をしている仲のいい猫だった。その猫がかなでちゃんのピンチを知らせて来たのだった。アリスは、 「先生!」 と言って手を挙げた。 「は…はぃ?突然どうしたの?アリスちゃん」 「かなでちゃんがピンチなの!助けて!」 「え?かなでちゃんなら、早引きしてついさっき私が家に送り届けたから大丈夫ですよ?」 「そうじゃないの、家の入口に倒れてるの!」 「ええ?そんなバカな…確かに私は家の門のところまで送ったんですよ?門のところまで…え?まさか!?」  アリスは我慢できずに駆けだした。学校の玄関を出るころ、先生が追い付きかけたが、アリスは上履きのまま走り出たので止められない。 「ママ、ママー!助けて!」  「どうしたの?アリス?」 レイはまだ授業中のはずのアリスからの連絡に驚いた。 「友達のかなでちゃんが倒れてるってミクが知らせてきたの」 「ミクちゃん?友達?」 「そう、猫の友達」 「わたしも行くから、場所を教えなさい」 「学校の裏の神社だよ」 「わかった。すぐ行くから」 と言ってレイは室長の前に行こうとしたら、室長は、 「全部聞いてたよ。雷がパトを運転!レイと一緒に出ろ!」 「わかりました!」 と言って二人で出た。 ……  「アリスちゃん待って!」 アリスは小柄だが、足は速かった。大人の先生でも付いて行くのがやっとだ。  やがて神社前に着いた。先生は完全に息が上がっていた…。  そこにISDのパトも到着してレイが降りて来た。神社の境内を見渡す。奥に家屋が見えたので近寄ると、 「ママ!来てくれたのね!」 とアリスが近寄ってきた。 「こっちよ!」 とアリスの言う方に進むと、玄関のようなものが見えてきて、そこに子供が倒れているのが見えた。  すぐに近寄りレイがバイタルをとる。 「危ないわね。チアノーゼ寸前よ。何かのアレルギー性ショックみたいだけど…、何のアレルギーかわからないと危ないわ…」  そこに誰が呼んだのか、救急車が到着した。呼んだのはたぶんISDの誰かね。  その時アリスが、 「ハチよ!ハチが刺したと言ってるの!」 見ると玄関の上に大きなスズメバチの巣があって、周りを数匹のハチが飛んでいるのが見えた。 「アリスの言うとおりだと思う」 とレイが言い、そのことを救急隊の人に伝えた。 ……数日後 かなではどうしてアリスがあの場所に来たのか不思議でならず、学校でアリスに聞いてみた。 アリスは、 「ミクちゃんが教えてくれたんだよ?黒猫の」 かなでは、 「ああ、いつも境内にきているあの黒猫か、と納得し、それ以来黒猫ミクは、その神社でおやつをもらえるようになったそうだ…。 渚の街のモノクローム第2期 アリス第3話 「黒猫に助けられた少女」 終 あとがきは次のページへ。
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