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そのフルーツ王子が使用人と共にやってきた、箱詰めに盛られた沢山のフルーツと野菜を抱えて、都会の闇に潜む町人が目をギラつかせる。
「さあ、みんな持っていって、良いよ」
フルーツ王子が今日はリンゴだと言って、箱を置く。わっと飛び付くホームレス。私は町の人々の獰猛さに付いていけず、端から次々と開かれていく箱。やっぱりキュウリやトマト。
影のホームレスでも序列の様な暗黙のルールがある、それは貧欲な方と手を出して良いかためらう方だ、私は自信のない方だ。フルーツ王子が。
「ほら、独り占めしないで、また持ってくるから、さあ、娘さん。リンゴ食べなよ」
眩しくてドキドキが止まらない、この声を求めていたの。フルーツ王子はためらう人々にリンゴを渡す。
「ありがとうございます」
私はそれ以上会話を続ける勇気がなかった、それにこの施しもいつまで続くか解らないのだ。
それに私は小学校しか出ず、不登校したわけで、高校までは学費を町でまかなってくれると言うのに馴染めず、不登校したわけで。
親に愛情が感じられず、親を振り切って都会に出てきた身。身勝手なのは解ってる。
あまりにもフルーツ王子たるユリシーザ様には似合わない身であり、お話する自信はない。
やっぱりユリシーザ様は、たぶん妄想だけど、しっかり学校へ行き英才教育をきちんとこなして、親の跡取りとしてやっていくだなんて。
そんな立場の人とは舞台が違うと、まざまざ思わされた、私がほやほやユリシーザ様を眺めていると、町の猛獣の様なひとりが、私のリンゴに手をかけようとする。
「ダメ!! 他人の物を取らない、公共の場なんだから、確認を取る」
「すいません」
手が引かれる。私はほっとして、リンゴを両手で抱えると、強奪の手が引いたのを見計らって、気弱なグループがちらほら集まり、私は残ってたキュウリとトマトをいくつか取る。
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