「ズキズキ」

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「ズキズキ」

「温泉飽きた? もう帰ろうって事?」  キースの言葉に、ルカはすぐにオレから視線を外して、キースを見る。 「つまみとか売ってるとこで飲んでる」 「ああ、なんだ。 うん、了解」  そのまま。ルカとゴウは行ってしまった。  一緒に居た女の子達も2人の後についてきていて、歩いて行く2人のその後を、キャッキャ言いながら、ついていった。 「――――……」  ルカが女の子達に、来い、とか言ってる感じじゃなさそう、だったけど。  ――――……別についてくるなと、言ってる訳でもなさそう。  ……言わないか。ルカだもんな。  ズキズキ。 「ルカが女の子連れてるの、最近だとちょっと珍しいなあ……」  リアが言いながら、んー、と、オレを見つめてくる。 「嫌、じゃない?」 「――――……別に……」  体の奥の方が、なんか、ちょっと。  ……ズキズキするだけ。  ……でも別にいいし。 「でも今のはルカが連れて行った訳じゃなさそうだけど。だって、ルカ、わざわざ、どこに行くか言いに来たんだよ。ソラに」  キースの言葉に、ん?とキースを見つめてしまう。 「――――……オレに?」 「だって別にオレらに言う必要ないし。こういうとこに居るなら別にばらけてるのだっていつもの事だしさ。あれはソラに言いに来たんだよ」  ………………。  知らないし。  別に。名前呼ばれたわけじゃ、ないし。 「ちょっとでも嫌だなと思ってるんなら、話しておいで?」 「――――……」  キースの優しい言い方に。  なんか、真向から、違うし、と言うのも何だか違う気がして。オレは黙った。 「――――……」  うー……。  …………どうしよう。  ――――……いこう、かなあ。  ……ルカの所。  考えていると、リアが、クスクス笑った。 「可愛いなあ、ソラ。――――……めっちゃ気になってるんだから、いっておいでよ」 「話して上手くいかなかったら戻ってきていいよ」  リアとキースの、優しい言葉に。  ……うん、と頷いて、お湯から立ち上がった。 「――――……ちょっと行ってくる。……嫌いって言っちゃったし」 「あら。嫌いって言っちゃったの?」 「うん」 「そっか。それで、ソラさっきから気にしてるんだね」 「……うん。ちょっとだけ、話してくるね」  そう言うと、2人はくす、と笑った。 「ちょっとじゃなくても平気よ?」 「ここまっすぐ歩いて行ったとこだよ。いってらっしゃい」  言われた方に向かって、歩き始める。  一番奥の所にたどり着いて、見回す。  結構混んでて、ぱっと見、見つからなくて。  ここでいいのかなあ。  ――――……ここじゃないとこ、行ったとか?  女の子と? 「――――……」  やっぱ。  ……嫌かも。  視線が下に落ちた瞬間。 「――――……ソラ?」  後ろから聞こえた声は。  振り返ると、そこには、ルカの姿。 「ルカ……」 「――――……は。何だ、その顔」  ルカは持っていた酒を、側のテーブルに置いて、オレの手を引いた。  ぎゅ、と抱き締められる。 「――――……っ」  こんなとこ、で。  人。周りに、居る、のに。  ……でも、いいのか。  この世界は、男同士でも、気にしてない。 「――――……オレんとこ来た?」 「……うん」  頷くと、ルカがクスクス笑う。 「さみしくなった?」 「…………ん」 「嫌いっつったくせに?」 「…………」  返事できないで居ると、頬に触れられて、顔を上げさせられた。  ――――……じっとオレを見つめてから。  ぷ、と笑ったルカに、ちゅ、と軽くキスされた。 「ほんとお前、素直じゃねーな」 「――――……」 「……オレの側に居る? 居ない? どっち?」 「――――……」  黙ってると、頬を親指で、すり、と撫でられる。
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