「ブレないな」

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「ブレないな」

   結局、あれから、皆でテーブルに座って、いつもみたいに、適当に頼んだ食べ物と飲み物で、飲み会になってしまった。  温泉、上がるの早や……。  まだ午前中なんだけど。  ほんと、いーなー、自由で、この世界。  ……学校って、あるのかな……??  いや、ゲームの世界には、無かった気がする。 「……ね、ルカ、学校ってある?」  とりあえず、聞いてみたらルカは一瞬止まってから、首を傾げた。 「……無いな。何だ?」 「皆で集まって勉強するところ」 「――――……集まっては、しねえかな」  なるほど。 「子供には、知ってる大人が教える。――――……城に帰れば、頭の良い奴が、子供を集めていっぺんに教えてる所はあるけど?」 「あ、それを学校って言ってるんだと思う」 「ふうん。じゃあ、あるのか」 「うん」  ふむふむ。子供はそうなのか。  ……でも、となると……オレとかが勉強するところは、ないのかな。    ……でも、まあ。  大学の勉強は、ここで生きてくならなんの役にも立たなそうだけど……。  英語もドイツ語も、数学も経済も――――……ずーっと小さい頃から勉強してきた社会や理科とかも、何も役に立たないか。国語とか道徳とか心理学とかは役に立つかなあ?  ちょっと愕然する。  今まで必死に学んできた事が、ほとんど役に立たないって。 「何難しい顔してんだ?」  顎に手がかかって、ルカの方、向かされる。  ――――……顎に手。とか。  ……結構慣れて来てるけど、これって、ほんとなら、かなり恥ずかしいことな気がするんだけど。  何かもう、さっきルカの所に戻ってから、これでもかという位にくっついて座らされてるし、なんか、今は、余計にもういいや、て気になってしまっている。 「……子供じゃなくて、オレが勉強するとか言ったら、どこでするの?」 「――――……」  マジマジ見つめられる。 「……何の勉強がしてえの?」 「なんのって言われると困るんだけど……」 「ん」 「学校、行ってたんだよね、向こうでは」 「ふうん……行きたいのか?」 「……まあ……勉強はした方がいいかなあ……」  ……でも役に立たないんだよなー。こっちで。  うーん。どうなんだろ。 「城に行けば、書物庫はあるから――――…… そこで本でも読むか?」 「あ、うん。読んでみる」  こっちの世界の書物なら、勉強して、役に立つかもしれない。 「じゃあオレも一緒に読む」 「ルカも?」 「あんまり読んだことねえから、良い機会」 「読んだこと無いの?」 「本読んでると眠くなってくる」 「――――……」  なるほど。  ……ぷぷ、と笑ってしまうと。ルカがムッとする。 「何笑ってンだよ」  ぶに。と両頬摘ままれる。 「だって、なんか、ルカっぽくて」 「なんか失礼だな、お前」 「だって」  クスクス笑ってると、隣でリアが笑い出す。 「ほんと、ルカっぽいもんね」 「オレも本なんか読まねえけど」 「……ゴウも、ぽいね」  思わず正直に言ってしまうと、ゴウにもちょっと睨まれつつ。 「一緒に読もうな」  ルカが言うので頷いてる。と。リアがまた可笑しそうに笑い出した。 「ルカはソラと居たいだけでしょ。本はついででしょ」 「つか、いつか読みに行こうかとは思ってた」 「そうなの?」 「他の世界とかの本、探してえし」 「――――……」  オレはふ、とルカを見上げた。 「あー、なるほどねー」  3人がルカを見て、ぷ、と笑ってるので。 「んだよ」  ルカがちょっと嫌そうに3人を見る。 「ルカが本とか、驚いてたけど、それなら分かった」 「お前全部ソラ絡みな」 「ソラの為なんだねえ」  キースとゴウとリアの言葉。  ……よっぽど本読まないんだな、ルカ。  おかしくなって、クスクス笑ってしまうと。 「お前も何笑ってんだよ」  とルカに突っ込まれる。 「――――……よっぽど本、普段読まないんだろうなーって思って」  言ったら余計面白くなってきて、あはは、と笑ってると。  ぷに、と頬に触れられて。そのまま引き寄せられた。 「ん、む……っ??」  ――――……何で、キスに、なっちゃうんだ。 「ん、ソラ、風呂いこーぜ」  ひょい、と抱かれて、地面に立たされる。 「ちょっと行ってくるわ」   ルカが皆にそう言うと、半分呆れた顔してた皆が、はーい、と笑った。 「来い、ソラ」 「……ん」  手首を引かれて、そのままついてく。 「……ルカ、さっき、お風呂飽きたって言ってなかった?」 「あぁ。 お前と離れて入ってんのに飽きただけ。まだ一緒に入ってねーだろ」 「――――……」  ルカって。  ほんと照れるとか、無いのかな。  誰の前でも、いつでも、  ずーーっとブレないで、そのまんま。  オレの手を引いて、少し前を歩いてる、広い背中を見ながら。  何でだか、ふ、と笑んでしまった。  
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