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⑦
「そう、今や“仮面ライダー・スト○ンガー”に変身したシゲちゃんは、目的を失った単なる満ち満ちたエネルギーの塊になってしまいました。そのエネルギーをぶつける相手も改心してしまったのです。もちろん、雑魚キャラもです。彼らとは友情さえ築かれてしまいました。ただ、そのことをシゲちゃんは忘れてしまっているのでしょうけれど」
「記憶が蒸発したのですものね。じゃあ、どうなる? どうなるのかな?」
「スト○ンガーに残された道はただ一つ!」
「たたた、『ただ一つ』?」
「ヒューマンに戻るためにそのパワーを使うのです!! この場合、一気に戻っても問題はありません。その後すぐに戦う予定はありませんからね」
「『シゲちゃん』に戻った際にどれだけ疲労感があったとしても、休めば良いということですものね」
「そーそー、そういうことです。あるいは、休む必要はないかもしれませんね。エネルギーに満ち満ちていますので、人間に戻るためにそれを使ったとしても、それほど疲れないのではないかと予想できるからです。すぐに買い物にも行けるでしょう」
「……でも」
「ん? どうしたの左くん」
「どうかと思いますね、そんなヒーロー」
「実は、わたしもそう思います」
「そもそも、まったく無駄ですよね? その変身能力」
「その通りです。でもでもね、人間って誰でも無駄なものを背負っているものです」
「……例えば?」
「そうですねぇ……手足の指に生えている毛とか、30代後半の頃から抜けずに伸び続ける眉毛とか、枝毛とか、耳毛とか――」
「『毛』ばっかりですね?」
「そうそう思い出した。そういえば、わたし、発見したことがあるの」
「何をですか?」
「耳毛が生えている人って、鼻息が荒いのよ! ねえ、知ってた? 知ってた?」
「なんですか、それ」
「え? 左くん、この事実、知ってたの?」
「知りませんよ」
「あー良かったわ。一つ知識が増えたわね♡」
「いりませんよ、そんな知識……って、確かな根拠はないでしょう?」
「無論、ございません。てへへのへ(^^)/」
「何だったのですか、この時間は?」
「変身って無駄だねっていう、お・は・な・し・♡」
「どっと疲れました」
「あ、疲労感? 疲労感?」
「ええ、この上ないそれです」
「それ、おそらく“寒暖差疲労”っていうやつですよ」
「明らかに違いますよ。ここまでの司さんの話についていこうとしたことによる疲労なのは間違いありません」
「自業自得ですね」
「キミが言うな!」
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