1.脳内転送

10/10
前へ
/142ページ
次へ
 私は何のことかわからず、首を捻る。 「それ、キミの着ているその服だよ。なかなか可愛らしいだろ?」  私は、自身の格好を確認した。ジャマイカ柄のセーターを着ている……。 「さっきも言ったけど、いきなり全裸で生活するのは恥ずかしいでしょ? わたしの心遣いだけど、礼とかはいらないからね」  こ、この人、なんて気遣いが出来る人なの……。  ……っていうか、お尻は丸見えじゃない! 片手落ちだわ! 「じゃあ、気をつけてね。猫の世界で生きて行くのも大変だと思うけど、キミは器量よしだし、きっとどこかの人に可愛がってもらえると思うよ。お尻もかわいいし」  やだ、見ないで!  キャー。  病院を出ると、夜も更けていた。小洒落たショップが立ち並んで、昼間は若者で賑わっている街なのに、人はまばらだった。でも、閑散としていたことは、(かえ)って好都合だった。  医師にああ言われてから、スース―するお尻が気になって仕方がない。  私は、ビールケースが積まれた路地裏に身を潜め、助けてもらえそうな情報を探そうと、背中のスマートフォンをくわえて、ポケットから引き抜いた。
/142ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加