2.飼い猫になりたい

2/8
前へ
/142ページ
次へ
 暗闇の中から、いかついサバトラ柄の猫が顔を出した。  片目は潰れかけていて、耳も破れて、百戦錬磨の風貌である。  私なんかよりも、一回りも、二回りも大きいそいつが、のしのしと近づいてきた。  何も語らないが、堂々として貫録のある歩き方から察するに、この辺りを支配するボスなのだろう。  あたりめは美味しいけど、この状況はまずい……。  けど、怖くて体が動かない。 (ごめんなさい。ここは、あなたの縄張りだった? すぐに出ていくから、許してくれない? ねぇ、お願い)  念じてみるけど、サバトラ柄のボスは何も感じていないみたいで、品定めをするようにギラついた目を向けてきた。  こ、こいつはひょっとして、女としての私を狙っているの!?  私は、猫になっても、男の下心が読めるみたいだった。  知ったところで、下心をもてあそぶような器用な芸当はできないから、なんの役にも立たないんだけどね、人間の時から同じように……。  さあ、どうしよう。  もはや、神に祈るしかなかった。私は、目を閉じて念じる。 (誰か、助けて! お願い!)
/142ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加