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暗闇の中から、いかついサバトラ柄の猫が顔を出した。
片目は潰れかけていて、耳も破れて、百戦錬磨の風貌である。
私なんかよりも、一回りも、二回りも大きいそいつが、のしのしと近づいてきた。
何も語らないが、堂々として貫録のある歩き方から察するに、この辺りを支配するボスなのだろう。
あたりめは美味しいけど、この状況はまずい……。
けど、怖くて体が動かない。
(ごめんなさい。ここは、あなたの縄張りだった? すぐに出ていくから、許してくれない? ねぇ、お願い)
念じてみるけど、サバトラ柄のボスは何も感じていないみたいで、品定めをするようにギラついた目を向けてきた。
こ、こいつはひょっとして、女としての私を狙っているの!?
私は、猫になっても、男の下心が読めるみたいだった。
知ったところで、下心をもてあそぶような器用な芸当はできないから、なんの役にも立たないんだけどね、人間の時から同じように……。
さあ、どうしよう。
もはや、神に祈るしかなかった。私は、目を閉じて念じる。
(誰か、助けて! お願い!)
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