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必死になって念じていると、デジャブのような錯覚に陥る。
どこかで、同じような体験をした?
荒波が押し寄せるように記憶が蘇り、今置かれたこの状況に、前の彼、園田マキトと出会った時の鮮烈なエピソードが重なっていく。
――まだ大学生だったあの時、私は、見るからにヤンキーだとわかる集団に絡まれた。
友達と遅くまで盛り上がって終電を逃してしまい、歩いて帰ろうとしたのがまずかった。近道をしようと入った公園にヤンキーがたむろしていて、囲まれてしまったのである。
腕を掴まれ、木々が茂る中へ連れ込まれそうになった時、私は、恐怖で声が出せなかった。(誰か助けて)と、頭の中で念じることしかできない。
その時、ブロロロというエンジン音がして、強い光に照らされた。
「お前ら、何しようとしてんだ!? やめてやれよ!」
オフロードバイクから降りた白いヘルメットの男が、私の腕を引っ張って、ヤンキーから引き離してくれた。
私は、白いオフロードバイクが白馬に、ヘルメットの彼が王子に見えた。
ヤンキーたちは、脅そうと彼を取り囲んだけど、ヘルメットを脱がない彼は動じない。一触即発の中、遠くの方から、何台ものバイクが近づいてくる音がする。
「お前ら、今日は、大人しく諦めろ」
彼、園田マキトは、ヤンキーたちにそう言い捨てて、後部座席に私を乗せた――
「ぎゃおぉぉんっ!」
耳をつんざく怒声で、我に返る。
暗がりから出てきた何かが、私を追い越して、サバトラ柄のボスに飛びかかった。
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