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「ぎいやぁぁん! にぃやおん!」
サバトラ柄のボス猫に襲い掛かったのは、子猫にも見える小柄な猫だった。けれど、あっけなく跳ね返され、コンクリートに打ちつけられている。
「……グルグルグル」
それでも尚、小柄な猫は、勇敢にも立ち向かおうとしている。
上品だったはずの真っ白な毛並みは逆立ち、アゴが地面に着くほど頭を沈めて、戦闘態勢をとっていた。
私を助けに来てくれたのか、ただの縄張り争いなのかはわからないけど、どちらにせよ、念が通じたようで、私は安堵した。
戦う二匹に気付かれないように、じりじりと後ずさりして、闇に紛れるように気配を消す。
小柄な白猫には申し訳ない気持ちが湧いて、後ろ髪を引かれるけど……ごめんなさい。私は、争いごとが嫌いなの。
乱闘が、遠くに見えるところまで下がって、戦いの結末を見届けることなく、角を曲がって逃げた。
行くアテは無いけど、暗がりでじっとしているのが怖くて、灯りのともる商店街の中をテクテクと歩く。
なんなの、さっきのあれは? 猫界ではそこら中で、あんな乱闘が起こっているの? こんなの、絶対イヤ。
争いに巻き込まれたくないし、そもそも、争い事を見たくもない。
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