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私は平和主義者……じゃなくって、平和主義猫なの。
誰のことも憎まないし、恨まないから、私を争いに巻き込まないで。
とっくに終電も無くなった時間なのだろう。商店街には人っ子一人歩いていなかった。
落とし物を探すように、街路灯で照らされた路面の上に、視線を漂わせる。
やっぱり、野良猫として生きて行くなんて無理だわ。すぐにでも、暖かいお家に入りたい。ベッドで寝たい。愛してくれる飼い主と一緒に暮らしたい。
でも、本当の家族とは、みんな疎遠になっちゃってるし、前の彼もあんな事故で死んじゃったし……。
いくら考えても、頼れる先が、思い浮かばなかった。
ペット用品を扱っている店を見つけて、その前で立ち止まる。すでに閉店していたけど、ウインドウに、猫用の服が飾ってあった。セーラー服のようなものから、シックなものまである。
こんな服を、着てみたい。
誰か、こんな服を買ってくれないかな……。
私は、店の窓に自分の姿を映した。
ジャマイカ……。
イケてない服に、これから先の不安も重なって、気持ちがへこみ、涙が出そうになる。
その時、背中のスマートフォンが、ブルンブルンと震えた。
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