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アニメに出てくる、発明が得意な博士のような顔をした医師が、私の名前を呼んで、矢継ぎ早に質問をしてきた。
私は、力を込めるが、アゴを少し引くことすら出来ない。
ど、どうしたらいいの?
ちょっとパニックになって、もがこうとしてみるけど、身体はどこも動かない。すると、伝えられない悲しさが涙腺を刺激して、瞳に潤いを与えた。
「ん? どうしたの? 何か言いたいのかな?」
深いしわの入った医師の顔が歪む……。
それを眺めていると、ふと、意思を伝えられるかもしれない、ある方法を試してみようと閃いた。
瞳孔に意識を集中させて、銀縁眼鏡の向こうにある医師の目を突きさすように見る。
私の意図を汲み取ろうとしてくれているようで、医師の顔が、じわじわと近づいてきた。
そう。もっと近くに来て。私の心の声を聴いて。
医師は一度首を捻ったが、私がしゃべれないと分かると、私の前髪を上げ、年相応の広いおでこを重ねてくる。
そう、それでいい。
(聴こえますか? 私が生きているうちに、してほしいことがあるの。私の望みを叶えてほしいの)
聴こえて、お願い。私の心の声を。
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