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医師のおでこは、私のおでこと、ぴったりとくっついた。
「うんうん、いいねぇ。まだ、意識はあるんだね。キミの想いがぐんぐん伝わってくるよ」
不思議な私の能力が、この医師にも通用するようで、胸が躍る。
(臓器提供がしたいの。それを書いたカードを持っているから。望みを叶えてほしいの)
「ドナーカードのことかな? それは見させてもらったよ。使えそうな内臓は、全て提供可で、眼球と聴覚器官も提供してくれるんだね」
思いが通じた。
私は、前の彼と付き合っている時に、この能力に気付いた。おでこを合わることで意思を伝えられるのは、彼に対してだけなのかと思っていたけど、チャレンジしてみて良かった。
医師が顔を上げて、ハンカチでおでこの汗を拭いた。
「ほとんどの臓器は、刃物で刺されて傷ついているけど、心臓とか、腎臓とか、いくつかの臓器は、ご希望通り、活用させてもらうね。あ、それと……、眼球も」
し、しびれる。人の役に立てるということを知って、全身に電気が走る。
私は、これまでもそうしてきたし、最期まで誰かの役に立ちたいと思っていた。
願いが叶いそうで、胸のつかえも取れ、安らかな気持ちになる。
これで、心残りなく死ねる……。
「……ということで、臓器提供者への特典が適用されますよ」
白髪の医師が眼鏡の眉間を持ち上げ、にんまりと笑っていた。
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