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どういうこと?
臓器提供者への特典……?
私は、医師の言っていることが理解できず、一瞬、思考が止まった。
医師はそれに気付いていないのか、私の額に、線の繋がった小さな吸盤をいくつも貼り付けている。
「心配なさらずとも、大丈夫ですよ。これまでに、脳内転送で失敗したことは無いですから」
医師は、抱えるように私の頭を持ち上げると、ワイヤだらけのヘッドギアを被せてきた。
そういえば、数年前、延命措置に関する画期的な法律が成立したということが、メディアを大いに賑わせていたっけ。
うろ覚えでしかないけど、確か、意識を別の生命体に移して生きながらえることが、合法的に認められたとか……。
「人間で慣れてしまっているから、いきなり全裸になったら、恥ずかしいでしょう? だから、服を着せているんですよ。羞恥心が取れたら、脱いでもらって結構です」
言っている意味が理解できないでいると、医師は派手な服を着た黒猫を抱き上げ、私の目の前に掲げた。
「にゃあ」
愛嬌のある八割れ顔をした黒猫の鳴き声は、キーが高くてかわいい。
医師は、目尻を垂らして、猫に頬ずりをした。猫に対する愛情で溢れているようにしか見えなかったけど、やがて、冷めたように目が据わる。
「この猫ちゃんが、これからのあなたになるんですよ」
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