1.脳内転送

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 どういうこと?  臓器提供者への特典……?  私は、医師の言っていることが理解できず、一瞬、思考が止まった。  医師はそれに気付いていないのか、私の額に、線の繋がった小さな吸盤をいくつも貼り付けている。 「心配なさらずとも、大丈夫ですよ。これまでに、で失敗したことは無いですから」  医師は、抱えるように私の頭を持ち上げると、ワイヤだらけのヘッドギアを被せてきた。  そういえば、数年前、延命措置に関する画期的な法律が成立したということが、メディアを大いに賑わせていたっけ。  うろ覚えでしかないけど、確か、意識を別の生命体に移して生きながらえることが、合法的に認められたとか……。 「人間で慣れてしまっているから、いきなり全裸になったら、恥ずかしいでしょう? だから、服を着せているんですよ。羞恥心が取れたら、脱いでもらって結構です」  言っている意味が理解できないでいると、医師は派手な服を着た黒猫を抱き上げ、私の目の前に掲げた。 「にゃあ」  愛嬌のある八割れ顔をした黒猫の鳴き声は、キーが高くてかわいい。  医師は、目尻を垂らして、猫に頬ずりをした。猫に対する愛情で溢れているようにしか見えなかったけど、やがて、冷めたように目が据わる。 「この猫ちゃんが、これからのあなたになるんですよ」
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