聖女には選ばれなかったけれど、勇者さまの最愛となりました。

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 かつて、魔王を倒すため。  国王は国民から聖女を選ぼうと、聖なる力――加護を持つ女性を国中から集めた。そこで最も力の強い女性が聖女となり、人間側を勝利へと導いた。  人間と魔王との闘いが終結した後、聖女以外の加護を持つ女性はどうなったか?  彼女たちは国力を安定させるため全国の教会へと派遣された。17歳のマリーナもそのなかのひとりで、辺境領の教会で暮らしている。 「マリーナ! 治して!」  青い屋根の、教会の庭。  色とりどりの花に水をやっていたマリーナめがけて、ふたりの少年が飛び込んできた。 「もう。また転んで擦りむいたの?」 「どっちが先に港へ着くか競争してたんだ。そしたら、ボブが石につまずいて」  ボブと呼ばれた少年の膝からは血が流れている。  マリーナはしゃがんで彼に目線を合わせてにっこりと微笑んだ。そして両手をボブの膝にかざす。 「痛いの痛いの、とんでいけ」  ふわっとオレンジ色の光が生まれて、ボブの膝を包み込んだ。それは、マリーナの髪と同じ色。光は怪我に吸い込まれるように消えていき、同時に膝はつるんと元に戻った。 「やっぱりマリーナはすごいや!」 「おれらにとってはマリーナが聖女さまだよ」  立ち上がったマリーナはきらきらと瞳を輝かせる少年たちの頭を撫でる。
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