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アルベルトは教会を訪れるとまずそこに腰かけて、花に水をやるマリーナを眺めることが多かった。
マリーナは仕事を終えるとアルベルトの隣に座り、自らの手のひらをアルベルトの足へと翳す。
今日もまた、日課となった、癒しの時間を終えたところだった。
「君の光は、穏やかで丸みを帯びているな」
アルベルトがぼそりと零した。
彼は今までマリーナが出会ったなかで、いちばん低い声の持ち主だった。
マリーナはオレンジ色の瞳をしぱしぱと瞬かせた。
「穏やかでまるい、ですか」
「聖女の光は大きく包み込むような金色だった。そして君の光は範囲は狭くても、とても温かくて心地いい」
アルベルトが瞳を閉じると、彫りの深い顔立ちと睫毛の長さがよく分かった。
間近で見たような口ぶりから、アルベルトは聖女に近い立場であることが容易に想像できた。
つまり、マリーナがこの教会にいる理由も知っているはずだ。
(範囲が狭いせいで聖女には選ばれなかったんだけどなー)
マリーナがささやかなため息を飲み込むと同時に、アルベルトは瞳を開けて空を見上げた。
つられてマリーナも顔を上に向ける。雲ひとつない、からっとした晴れ空だ。
「私の怪我と君の力は相性がいい。どんどん状態がよくなっていくのを感じる」
「お役に立てているなら、光栄です」
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