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そこへ、マリーナとアルベルトの間に割って入るようにマイクとボブが飛び込んできた。
「アルベルト、覚悟!」
「今日こそはおれたちが勝つ!」
「ちょっと、あなたたち」
マリーナが制しても少年たちは臨戦態勢を崩さない。
マイクとボブの手にはそれぞれ木の枝が握られている。
応じて、アルベルトもゆっくりと立ち上がって杖をついた。
「さて、どうかな?」
マリーナに対するぼそぼそとした喋り方は消えて、堂々とした声。大きくて通りがよく、立派な大人そのものだ。
「いくぞーっ」
がむしゃらにふたりの少年がアルベルトへ挑む。
杖をついていた筈のアルベルトだったが、ひらりと少年たちの攻撃をかわしつつ、足の不自由さを感じさせない見事な動きで彼らの手にある木の枝を杖で弾いた。
どさっ、と勢いで尻もちをつくマイクとボブ。
「マイク! ボブ!」
マリーナの悲鳴とは真逆に、ふたりの表情は明るかった。
「すげー! やっぱり強いや!」
「アルベルト、かっこいい!」
彼らは最初こそマリーナを取られたと言わんばかりに敵対心むき出しだったが、今ではアルベルトの強さに惹かれて、こうして戦いを挑んでいた。
「なぁ、アルベルト。おれたちを弟子にしてくれよ」
「10年早いな。まずはたくさん食べて、大きくなることだ」
ベンチに座り直したアルベルトは、マイクとボブの頭をわしわしと撫でた。
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