塩を買って帰った夜

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「え、なに?」 「スピリチュアルっぽくてあれなんですけど、塩を舐めるんです。  粗塩をひとつまみ舐めて、冷たい水を飲むと、身体が軽くなるんですよ」 「塩って、まさか、俺が幽霊に取り憑かれてるとでも?」  Aも俺も怖い話が好きで、よく仕事の合間などにそういう話をしていたが、お互いあくまでエンタメとして楽しむタイプである。  だから、自分事として話すことは、これまではなかった。 「気持ちの問題ですよ。ほんとに気休めというか、プラシーボ効果、的な」  笑いながら首を横に振るAに、 「まあ、そういうことなら」  俺は納得して、仕事帰りにスーパーに寄り、塩を買って帰った。  容器に入ったあじ塩ではなく、ビニールに包まれた、ちゃんとしたやつ。
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