Episode3

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「んじゃ行ってみよ」 俺は子供を連れて、その場から歩き出す。 辺りを探し回ってしばらくだった頃。 辺りを泣きそうな顔でキョロキョロしている女性がいた。 「お母さん!」 そう子供が叫ぶと、女性は泣きそうな顔で子供に抱きついた。 「良かったね、お母さん見つかって」 「うん!お兄たんありがとう!」 かっ、可愛い……。 「すみません、ありがとうございました」 女性は俺に向かって頭を下げてきた。 「いえいえ。見つかって良かったです」 言うと、女性はもう一度礼をして、背を向けた。 と、不意に額に水が落ちてきた。 それは勢いを増し、俺の体温を奪っていく。 俺が見てる前で、親子はひとつの傘に入り、歩き出した。 横を向いた子供は、とても笑顔になっていた。 「……嬉しそう」 あれが家族なのかな。 なんで記憶が無いのか分からないけど、ああいうのを見ると、胸が締め付けられる。 「………」 俺は雨宿りする気にもなれず、通路の邪魔にならないところにしゃがみこむ。 「なんか……むしゃくしゃする」 俺の頬を、涙か雨か分からないものが伝っていく。 「……家族に、会いたい」 呟いて、膝に顔を埋めた時だった。 ──サァッ 俺の体に当たっていた雨が止んだ。 ゆっくりと顔を上げると、そこには、傘を持っているあの時の青年が立っていた。 「え──」 「見つけた。探したんだぞ。雨も降ってくるし、最悪だ」
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