仮初めの花嫁

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私の名前は、秋月 澪(あかつき みお)24歳。 都内のホテルでフロント勤務をしている。 最近は少しずつ仕事にも慣れてきて、フロントで婚礼の担当に任命された。 今日は、大安吉日。 朝早くから婚礼準備のために、花嫁がホテルにやってくる。 そんな中、一人の男性が凄い形相でフロントに向かってきた。 その様子から、かなり慌てている様子だ。 「いらっしゃいませ。」 私が声を掛けると、男性は息を切らせながら話し出した。 「今日の結婚式に間に合うように、花嫁を用意して欲しい!」 お客様のご要望に添える努力をするのが、ホテル従業員の心得と思っている。 しかし、このご要望には応えられそうもない。 それ以前に意味不明だ。 「お客様、申し訳ございませんが、仰っている意味が良くわからないのですが…。」 すると、この男性はフロントカウンターに乗り出すようにして、いきなり私の手首を掴んだ。 「君、独身か?」 私は男性に圧倒されるように、答えてしまった。 「ど…独身でございますが…。」 私の返事を聞くと、その男性は表情を緩めて微笑んだ。 あらためてその男性を良く見ると、眩しいほどに美しく、神の最高傑作ではないかと思うほどに整った容姿をしている。 眉目秀麗とはこういう男性の事だろう。 しかし、そんな事を考えていると、さらに驚くことをこの男性は言うのだった。 「今日の結婚式で新婦をしてくれ。」 日本語なのに意味が分からない。 「あの…私には全く意味がわからないのですが…。」
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