もう一度初めから

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もう一度初めから

・・・・・ 「陽斗さん、行ってらっしゃい。」 陽斗のマンションに戻った私は陽斗を以前のように送り出した。 しかし、以前と変わったのは陽斗だった。 「澪、行ってきます。」 そして、私の額にチュッとキスをしたのだった。 突然の口づけに驚き顔が熱くなる。 その頬に陽斗は手を添えて、微笑を浮べた。 ものすごく破壊力のある微笑だ。 「真っ赤になって、うちの奥さんは可愛いね。」 私が何か言おうとするが、陽斗はヒラヒラと手を振って玄関を出て行ってしまった。 私の実家から帰ってきて以来、陽斗さんが甘すぎるのだ。 その度に心臓がドキドキとうるさく騒ぎ出し、これから心臓が持つのだろうかと思ってしまうくらいだった。 実家からの帰り道、陽斗が言った言葉がある。 それは、“僕たちは初めからもう一度やり直そう”と言ったのだ。 最初から夫婦になってしまったが、本来は恋をして愛を育みあって結婚する。 だからまずは恋人になるところからやり直そうと言ったのだ。 しかし、もともと陽斗とは恋愛の経験値が違い過ぎる。 いくら本気の恋はしていないと言っても、陽斗は何人の女性と付き合ってきたのだろう。 世間の恋人同士はどういう接し方をしているのだろうか。 考えるとますます分からなくなる。 陽斗さんとの接し方が分からず頼ったのは、美粧室のチーフをしている安藤だ。 結婚式でも私の支度をしてくれたのは安藤なのだ。 安藤は私がフロントで婚礼担当になって以来、何かと相談に乗ってくれるお姉さんだ。 安藤は結婚したが離婚も経験している。 そして今は新しい彼と同棲していると聞いていた。 経験豊富な安藤に頼るしかないと思い連絡をしたのだった。
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