プロローグ だし香るけんちん汁とエラ

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「あれ?」  私はハッと我に返った。  目の前の木製テーブルには木のお椀に入った何かの汁物が置かれている。そして、右手には木のお箸……。 「これは……、けんちん汁?」  お箸と一緒にお椀を両手で持ち上げながら、まじまじと見つめて、香りも確かめて、私はその汁物がけんちん汁だと理解した。とても美味しそうな“だし”と“醤油”の香りがする。具材は大根、にんじん、ごぼう、里芋、しいたけ、木綿豆腐といったところだろうか。  正直言って、お腹が減っているので今すぐにでもこのけんちん汁を食べたいところなのだけれど、今居る部屋のこととかこの現状のことが気になって、安心してこれを食すことが出来ない。  なぜなら、私……さっき死んだんです。
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