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「先生! 妻の、綾子の手術はどうなりました?」
佐藤剛は、手術室から出てきた妻の主治医の肩を掴む。綾子は数年前より肝臓癌を患っており、本日念願の移植手術を受けていた。だが、やはり命に関わる重大な手術ということで剛は終始緊張しきっており、ヌルヌルとした手汗が滲み出ている。
「佐藤さん、ご安心下さい。奥様の手術は無事に成功しました。特異な事がない限り、一ヶ月後には退院できますよ。」
「せ、先生! 本当にありがとうございます!」
張り詰めていた気持ちが緩んだ剛の目からは、大粒の涙がこぼれ落ちる。それはまるで、長い闘病生活の終わりを祝福しているかのように煌めいていた。
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