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目の前にいる佳子は、「ピンク役がやりたい。」と必死に俺にお願いしていた、小さなカコとは違う大人の女で。俺は、自分の理性と一生懸命闘いながら、無意味な質問の答えを待つ。
「俳優じゃ無い照に、演技のキスなんてしない。好きな人にしか、本当のキスはしない。」
俺が佳子を支えたいと思ったのは、男としてじゃ無かったのに。純粋に、頑張ってる佳子の力になりたいと思っていたのに。
佳子が、「照」と呼ぶ度に。
俺が、佳子にタメ口をきく度に。
佳子が、俺だけに素の表情を見せる度に。
俺が、佳子に理性を働かせる度に。
一人の女として佳子に惹かれてしまっている自分に気が付いていた。
そんな俺が佳子にキスされて、心が動かない訳がない。
ボロボロの理性は、佳子の素直な言葉で砕け散った。
「一緒に戦うためじゃ無い。好きだから、教えてやるよ。」
佳子の小さな頭を右手で支えると、逃さないように、華奢な背中に左手を回した。そして、柔らかく熱い唇に、マネージャーから男に変わった俺がキスをした。
もう、止めるなんて無理だ。
ここでカットがかかっても、俺たちは止まれない。
だって、これは、演技じゃ無いから。
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