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 俺は佳子と同じ24歳。  見た目は年齢よりも年上に見られることが多く、明らかに年上の人から敬語で話をされることがよくある。  大学まで打ち込んでいた水泳が、体格を良く見せているせいでもあるのだろう。  前任のマネージャーが切迫早産の危険性がある為、急な産休に入り、予定より早く、俺が佳子のマネージャーに着くことになった。  今、撮っている学園物のドラマが終わると、次は映画の撮影が待っている。これも学園物だが、ヒロインのライバル役で出番が多い。  しかし、今一番力を入れているのは、配信ドラマの主役オーディション。  1話完結で全6話。それぞれに違う配役で、主役はネクストブレイク級の女優を想定している。佳子はその条件を満たしている。しかし、その内容は、大人のラブストリーで、全話必ずベッドシーンがある。それもかなり際どい描写のもの。  佳子はその主役を射止めて、未成年から成人へとイメージを変えたいと思っている。それは、マネージメントとしても賛成で、仕事の幅を広げるためにも、今がその時だと判断した。  1次オーディションの手応えはあった。後はカメラテストを兼ねた最終オーディションで主役を掴めるかだ。  「水谷さん。事務所に届いてる本とDVD、大量だからウチに運ぶの手伝って。」  佳子が現場からの帰りに頼んできたので、段ボールいっぱいの本とDVDを抱えて部屋に運んだ。  「ついでに、TVの配線もしてくれない?」  俺は便利屋か?  普段は人目も有るので、同い年と言えども絶対に佳子にはため口を聞かないけれど、二人きりだと話は別だ。  「普通、配線は業者に頼むだろ。」  普段着の佳子は普通の大人で、最近引っ越したばかりの一人暮らしの部屋は落ち着いた色合いで、まとめられていた。  「だって、知らない人がウチに居るのって、苦手で。」  俺が文句を言う事が分かっていたかのように、作り笑いで甘えた顔をする。  俺にそんな顔をしても、無意味なのに。  「だったら、男に頼め。ウチは恋愛禁止じゃ無いだろ。」  「彼氏がいたら(てる)に頼まないよ。」  今度は拗ねた顔で俺をにらむ。  佳子も、二人になると俺を照と呼ぶ。  俺たちの間には、タレントとマネージャーの関係以外無いけれど、俺が佳子に着くようになってから自然とこうなって行った。  俺は仕事の一環だと諦めて、早々に配線に取り掛かる。  佳子は、俺が運んだ段ボールの中から、本を取り出してパラパラとめくって読んでいる。  演技の参考にするとか言ってたな。まぁ、熱心なのは良い事だ。   
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