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「あなたは生死の境を彷徨っています。しかしこれは、私の上司である神の手違いなのです」 「……は?」 「本来、あなたはもっと長生きするはずでした。しかしうっかり、神が間違えてあなたの方にトラックを突っ込ませてしまったのです」  そう言われて思い出した。いつものように通学路を歩いて家に帰る途中だった。その時突然、トラックが私の方に突っ込んできたのだ。 「あなたの前を歩いていた男性が死ぬはずでした。ちょっとタイミングを間違えてしまったのです」 「そんな、ひどい!」  思わず憤慨してから、でも死んだ方が良かったかもしれない、と思い直す。醜い私なんて、死んだところで悲しむ人はいない。 「ですので、救済措置をご用意いたしました」  そう言って田中は、タキシードの胸ポケットからシャラ、と何かを取り出した。そっと私に手渡す。  見たところ、ただのペンダントのようだ。銀色の細いチェーンに、赤い宝石の付いたダイヤ型のペンダントトップが付いている。 「なにこれ?」 「回数限定式外見変更装置でございます。まあ『変身ボタン』といったところでしょうか」 「変身ボタン……?」  首を傾げつつ、顔の前にペンダントを掲げる。そんな私を横目に、田中は分厚い本を捲って説明し始めた。
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