満月だけが知っている

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満月だけが知っている

お父様と廊下ですれ違った。 私と同じ栗色の髪に、エレンと同じ青空の瞳。 美しい顔立ちはエレンと似ていた。 目が合ったけど、視線をそらされてしまう。 「お、お父様」 勇気を振り絞って、声をかける。 「……なんだ。」 冷たく見下ろすお父様。 その視線にビクッとなる。 いつからだろう。 お父様が私を避けるようになったのは。 「お父様は、私のことが嫌いですか?」 口をついて出た言葉にお父様は黙り込む。 そして、お父様は私の横を通り過ぎていった。 お父様……以前のように愛してはくれないのですね。 寂しさと悲しみを覚える。 私は、誰からも必要とされていない。 毎日、お義母様とエレンにいじめられる。 もう疲れたわ。 「ねぇ、お母様。私もう限界です……」 お母様の形見であるペンダントを見つめる。 「お母様、そちらに行ってもいいですか?」 涙が溢れた。 嗚咽が夜の屋敷に響く。 「お母様……」 その様子を満月だけが見ていた。
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