27人が本棚に入れています
本棚に追加
満月だけが知っている
お父様と廊下ですれ違った。
私と同じ栗色の髪に、エレンと同じ青空の瞳。
美しい顔立ちはエレンと似ていた。
目が合ったけど、視線をそらされてしまう。
「お、お父様」
勇気を振り絞って、声をかける。
「……なんだ。」
冷たく見下ろすお父様。
その視線にビクッとなる。
いつからだろう。
お父様が私を避けるようになったのは。
「お父様は、私のことが嫌いですか?」
口をついて出た言葉にお父様は黙り込む。
そして、お父様は私の横を通り過ぎていった。
お父様……以前のように愛してはくれないのですね。
寂しさと悲しみを覚える。
私は、誰からも必要とされていない。
毎日、お義母様とエレンにいじめられる。
もう疲れたわ。
「ねぇ、お母様。私もう限界です……」
お母様の形見であるペンダントを見つめる。
「お母様、そちらに行ってもいいですか?」
涙が溢れた。
嗚咽が夜の屋敷に響く。
「お母様……」
その様子を満月だけが見ていた。
最初のコメントを投稿しよう!