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リリアナの日常
「リリアナ!!掃除は終わったの!!?」
廊下を歩いているとオレンジに近い金髪に
ペリドット色の瞳の美しい女性が怒鳴り込んできた。
ドレスは紫で金糸が施されていて
派手な感じだ。
「お、お義母様」
私の義母
エリザベス・ネル・シュヴァルツだ。
私はこのアレクサンデル王国、伯爵家の娘。
私と義母は血が繋がっていない。
父であるエリオットと前妻であるローズマリア
との間に生まれたのが私だ。
お母様は、わたしが五歳のとき、
病気で亡くなっている。
それからすぐ義母と父が結婚したのだ。
どうしよう、まだ掃除終わってない。
「……申し訳ありません。まだ屋敷全てを掃除できていません。」
私の頬に衝撃が走る。
お義母様に叩かれたのだ。
「掃除もまともに出来ないなんてグズね!!」
お義母様の厳しくも美しい顔がさらに険しくなった。
「も、申し訳ございません」
自分が嫌になる。
掃除一つもできないなんて。
涙がじわりと込み上げる。
「あぁ、その淡紅色の瞳、嫌気が差すわ!あの女と同じ色……気に入らない!!」
あの女とは恐らくお母様のことだろう。
お母様の優しい笑顔が蘇る。
お母様、会いたいよ。
「お母様、そんなに怒らないであげて?」
可憐な声が響き、振り向くと
お義母様と同じオレンジに近い波打った金髪を赤いリボンで二つ結びにした青空のような瞳の美少女がいた。
「エレン」
お義母様が彼女の名を呼ぶ。
彼女は五歳下の私の義妹だ。
「お姉様、わたしも手伝いますわ」
エレンが花が咲くように微笑む。
「え?」
思いもよらない言葉に戸惑いを隠せない。
エレンは、桶に入った汚れた水をわたしに
ぶちまけた。
「っっ!!」
冷たい。
お仕着せのスカートから水が滴る。
「あら、ごめんなさいお姉様。手が滑ってうっかり水をかけてしまいました。」
謝罪の言葉を口にするエレン。
だけど、笑みがこぼれていた。
「……」
「おほほほほ、リリアナ、なんて姿なの」
お義母様がおかしそうに笑う。
「お姉様、ちゃんと後片付けしといてくださいね?」
可愛らしく言うエレン。
だけど、黒い感情が透けて見えるようだった。
「わ、分かったわ」
冷たい。寒い。
だけど、掃除をしなきゃ、またお義母様に怒られる。
わたしは毎日、ビクビクしながら過ごしていた。
あの日までは。
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