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呪われた氷王子
「リリアナ、このドレスを着なさい」
突然、お義母様にドレスを差し出された。
淡紅色の上品なドレス。
胸元には紫の宝石が輝いていた。
「えっ?」
なぜ、わたしにドレスを……。
「お前は、レオンハルト殿下と婚約するのよ」
「え」
どういうこと?なぜそんなことに。
「本当はエレンが婚約する予定だったのだけどエレンが嫌がってね」
そういえば、エレンは隣国の王子と恋人同士だった。
エレンのことだから、何か思惑があってのことだろうけど。
「で、でも、お義母様! 私無理です!
王太子様と婚約なんて恐れ多い……」
「まぁ、断るっていうの?」
お義母様の目つきが鋭くなった。
「そういうわけでは……」
「では決まりね!さぁ早くこのドレスに着替えて馬車に乗りなさい」
それだけ言い残しお母様は自分の部屋に戻っていってしまった。
「え、えぇ?」
▽▽▽▽▽
「リリアナお嬢様も災難ですわね」
メイドがドレスに着替えた私の
髪を梳かしながら言った。
いつもはお嬢様扱いされないけれど、今日は王太子殿下と顔合わせの日。
身だしなみはとても大事だ。
だから、お父様がエレンのメイドを
こちらに寄越したのだ。
「あはは……」
笑うことしか出来ない。
お父様はそんなにも私のことを
疎んじているのだろうか。
胸がキュッと締め付けられた。
「何しろ、あの『呪われた氷王子』のもとに嫁ぐのですからね」
呪われた氷王子?
「その呼び名は……?」
不思議に思って聞くと侍女は
「あら、ご存知ありませんか」と
馬鹿にしたように笑った。
「レオンハルト殿下は、呪いによって顔半分が火傷を負っているのです。以前は美しいお顔でしたのでエレンお嬢様は恋人を捨て、嫁ぎたいと伯爵様に言ったそうですが呪いのことを知り、リリアナお嬢様に婚約を押し付けたのです」
エレン……。
恋人を捨ててまで結婚したかったのに呪いを受けているからって私に押し付けるなんて……。
妹に失望する。
大事なのは中身なのに。
「しかも、氷のように冷たい性格らしいのですよ」
「えっ」
性格まで冷たい人の妻でいることができるだろうか。
わたしは、不安を覚えた。
そんな様子を見たメイドはニヤリと笑い
「心配しなくても大丈夫ですわよ。
お嬢様はうまくやっていけますわ」
そうだろうか……。
わたしは悶々としたまま馬車に乗り込んだ。
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