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レオンハルトとリリアナ 後編
どれほど辛いだろうか。
リリアナ嬢の心境を考えると心が痛む。
わたしは『炎呪』
という病に侵されていた。
体を焼き尽くすこの病は治療師ですら、
治すことができず、匙を投げた。
17歳になった頃、
母は病のせいで爛れた顔を見て泣き崩れ
父にわたしを産んだことを謝ったと使用人達が
噂していたのを聞いたことがある。
わたしは望まれなかった子なのだと
思い知った。
苛立ちから、口調が荒くなり、
冷たい性格だと噂されるようになった。
その時からわたしは『呪われた氷王子』となった。
父と母は、わたしの逆恨みを恐れ、
わたしを王太子にした。
わたしが望んでいるのは地位ではない。
ただ、愛されたかっただけなのに……。
今更そんなことを言っても遅い。
弟達は、わたしを避けるようになり、
家族の食事の時間も別々だというのに。
唯一、一緒にいてくれるのは側近の
ユーリだけだった。
そんなとき、リリアナ嬢に出会った。
わたしの顔に恐れをなしたエレン嬢の
身代わりにリリアナ嬢はわたしの元へ
やってきたらしい。
リリアナ嬢もこんなわたしと婚約するなど嫌だろう。
わたしは婚約を解消しても良いと言った。
「わたしは婚約解消は致しません。ずっと、あなたのおそばにおります。」
にっこり笑う彼女は可愛らしかった。
初めて真っ直ぐにわたしを見つめる者と出会った。
その瞳はわたしの心を覗いているようだった。
それに何より、わたしの顔を見ても婚約解消をしない
と言ったのが何よりも驚いた。
硬く閉ざされたわたしの心の扉が
少し開いたような気がした。
リリアナ嬢は毎日登城してきては、城の掃除をしているらしい。
義母がいると言っていたので、
まさかいじめられているのかと思い、居場所がないのではないかと尋ねたところリリアナ嬢は義母と義妹にいじめられていて居場所がないと言った。
死のうと考えていたとも。
しかしわたしと出会い、必要としてくれるのなら
生きている意味があるのではないかと考えたらしい。
顔を歪めて今にも泣きそうなリリアナ嬢。
その境遇がわたしと重なり胸が苦しくなった。
「泣くな。これからはわたしがいる。お前のことはわたしが守ろう。だから、わたしのそばにいてほしい」
「はい」
腕の中のリリアナ嬢は嬉しそうに笑って涙を流した。
誰かを守りたいと思うのは初めてのことだった。
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