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海の前の家がいいと思っていたが家は持たなかった
だから死ぬ間際、海は夢にあらわれる
海底に白くて大きな氷が沈んだ海
あまり深くないよ、だから余計に怖いね
幼い姿の弟が浮橋から海に滑り落ちた
彼は私の夢でよく死んだ
首を吊り魔女に食われ迷子になり事故により
たぷたぷとうねる海面を見つめる
警察官がたくさん来たので証拠のグラスを手に逃げた
給湯室のシンクに中身のビールを捨てた
一口も飲んでねえの。理不尽だよねー
誰かのために誰かのためにって
ビルの廊下はいつのまにか薄暗い
死ぬ間際なのだ、帰らなければいけない
努めて冷静に鞄の中に手を入れる
航空券か切符かパスポートか
でも私は特に何も持たなかった
これからも(死んでからも)持つことはないだろ
それが事実だ
海が見たいと心の底から努めて冷静にお祈りする。
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