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そっと開けると、中から出てきたのは手袋だった。
「きっと亡くなる前に、日にち指定で送ってくれていたのね」
お母さんの言葉で、優太にも魔法の仕掛けが分かったのだけれど、やっぱりそれはどこか不思議な力が働いているような気がした。
(だけど、何で今日?)
顔に疑問を浮かべた優太を見て、お母さんは「ふふふっ」と小さく笑った。
「だって、今日は優くんのお誕生日でしょう? おばあちゃん、お誕生日に間に合うように編んでくれたのね。それに、この色……」
手袋を見た瞬間から優太の頭の中では、あの宝の山のような部屋で座椅子に座るおばあちゃんがいた。鼻に小さな眼鏡を乗せて、二本の棒針をクルクルクルクル動かして編み物をしているのだ。
おばあちゃんの周りには色とりどりの毛糸玉が転がっている。赤、橙、黄、緑、青、紺、紫……たくさんの毛糸たちが、おばあちゃんの手でスルスルと編まれて行き、まるで七色の虹のような手袋が出来上がって行く…。
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