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久しぶりに遊びに来たおばあちゃんの家は、本が山積みになっていたり、籠から毛糸玉が転げそうになっていたり、雑多な物で溢れていた。五歳の優太にとっては見慣れない宝の山のようであり、ここはいつもワクワクする場所だった。
その日も、宝探しの如く部屋をウロウロ探検する優太に、おばあちゃんはいつもと同じ、優太を安心させる穏やかな声で尋ねた。
「優くんは何色が一番好き?」
優太は、囁くような優しい声でゆっくり話すこのおばあちゃんが大好きだ。
(一番好きな色? 好きな色がたくさんありすぎてすぐには答えられないよ)
優太が黙ったまま答えられないでいると、おばあちゃんは「じゃあ、お家に帰ってからでも良いからゆっくり考えてね。決まったらおばあちゃんにも教えてくれる?」と言った。
「うん、分かった! がんばって考えるね!」
優太が大きな声で元気よくそう言うと、おばあちゃんは小さい目をもっと小さく細めて笑い、「待ってるわね」と言ってくれた。
大好きなおばあちゃんからの質問を、優太は一生懸命に考えた。なぜなら、たくさんある好きな色の中から本当に本当に、一番好きな色を答えたかったからだ。
お母さんも、「優くんの好きな色だから、優くんがゆっくり考えて良いんだよ」と、優太を急がせたりはしなかった。
(待っててね、おばあちゃん、もう少しだけ待っててね。ぼく、とっても真剣に考えるから!)
優太はそれから毎日、本当に一生懸命に考えた。
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