あなたを盗んで

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 空っぽのシャー芯ケース、バネがどっかいったボールペン、チェーンが切れたキーホルダー、ラミネートが剥がれかけのトレカ、折れたアイライナーetc。  学校には捨てられそうで捨てられていない持ち物が溢れている。  北園の目には、どうしてか輝いて見える。  誰かの持ち物にそれを見つけて、その人と授業や行事で一緒に行動したりするともう、持っていきたい衝動を抑えられなくなる。  駄目だとわかっている。嫌われるとわかっている。どうせ要らない物じゃんと思いもする。自分からは言えない。持ってっていいよと言ってほしい。  だってすごく欲しいんだ。あなたと過ごした小さな証。
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