あなたを盗んで

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 わたしは病気だ。  中学1年生の時には、北園は半分確信していた。  買ってもらったスマホでヒントを探し求めた。  窃盗症という病気が近いように思ったが、北園の症状にぴったり一致するケースは見つからない。  電子掲示板に質問を投稿したら、何かのトラウマが原因じゃないか、家族やスクールカウンセラーに相談しろと回答があった。  しかしカウンセラーに話せるようなトラウマ体験はないし、二人の姉には症状がなさそうだし、家族にも原因がわからないことは察していた。  だいたい、この症状を問題視しているのは北園自身と、要らない物を盗られて一時的に怒る人だけだ。  わたしが学校へ行かなければいいだけの話だ。  中学に上がる前から北園は休みがちのぼっちだったから、連日欠席しても周りに何かを言われることはなかった。  誰も見ないアルバムのつもりで、SNSに趣味関係の投稿をするようになった。  反応をくれる人が少しずつ増えた。  北園が衣装を自作したドールに毎回ハートをくれたり、裁縫のコツを聞いたり教えたりしてくれる人や、ドール服をデザインしてほしいと言ってくれる人も出てきた。  DMは断っているし、気が重いリプはできるだけ丁重にかわしながらも、北園のオンライン活動はリアルと比較にならないほどアクティブになった。  学校を休み続けている不安が膨らみすぎた時には登校したが、衝動が起きないようになるべく誰とも関わらないようにした。  そうしなくても、北園に構うクラスメイトはいなくなっていた。
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