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視線を感知したのか、九重がふとオレの方を見た。目が合う。一瞬、奴の琥珀色の瞳の奥で、ぎらりとした光が揺らいだ気がした。
背筋を凍らせるような鋭利で獰猛な光。思わず身震いしそうになるが、それは次の瞬間にはもう消えていた。――気のせいか?
九重はニッコリ笑うと、こちらに歩み寄ってきた。正確には、自分の席に着く為だろう。通り掛かる時、わざわざ立ち止まってオレに声を掛けてくる。
「おはよう、花鏡。……風見も」
「おう」と歯切れ悪く返したのはタカの方で、オレは「ケッ」と舌打ちをしてやった。
気安く話し掛けんなし。てめーと馴れ合う気なんかねーし。
九重は気にした風もなく、クスクスと愉しげに笑み零した。「相変わらず花鏡には嫌われてるな」なんて、余裕そうに言う。ムカつく。
「うっせー! 中間はお前に譲ってやったが、期末はそうはいかねーかんな! オレの方がお前なんかよりよっぽど神に愛されてるってことを証明してやる!」
「それは楽しみだな。何なら、僕が数学教えようか。花鏡ならすぐに覚えるだろ」
「余計なお世話だ!!」
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